ゆっくり自分の時間を過ごしたり、誰か大切な人とのお喋りを楽しむために欠かせない椅子。
みなさんはお気に入りの椅子ってありますか?
座り心地抜群のソファーやナチュラルな木目のシンプルな椅子、有名デザイナーが手がけたスタイリッシュな椅子など、好みは人それぞれ。
この記事では、2人の作家の魂が詰まったとっておきの椅子をご紹介します。

こちらのアームチェアは「OZA METALSTUDIO」の鉄作家・小沢敦志さんによる作品。
どんな人が座ってもちょうどよく感じる最高の座り心地になるように、頑丈にしたいところや身体が触れるところは幅を広く、それ以外の部分は可能な限り細くし、滑らかなカーブでつなぐ。その結果、細い脚や背もたれの曲線美が生み出され、鉄で作られたとは思えないほど美しく計算し尽くされたフォルムとなったのです。
小沢さんのアームチェアはこちらの記事でもご紹介させていただいておりますので、よろしければご覧ください。
アーム部分に近づいてみると、無数の色彩彫刻が施されています。
この彫刻を手掛けたのは、色彩彫刻家のはっとりこうへいさん。
数十層もの色を塗り重ね、それを彫刻刀で緻密に彫り出していくという自由でクレイジーな手法を特徴としています。
鉄の薄さを計算し、塗り重ねた鮮やかな色の層は・・・
このチェアのアームは、鉄の薄さを意識しながら、青、赤、オレンジをベースカラーに配色の順番を綿密に計算し、30層もの色を重ねているのです。
はっとりさんが日頃制作しているのは、手のひらサイズの置物や木目を生かした複雑な形のものが多く、今回のような平面で大きい面積を彫るのは初めてだそうです。
「球体や木目などがあるとその形に沿ってリズムを変えながら動きをつけて彫れる。でも平面だと何もないサラの状態なので、ゼロから絵を描くイメージで彫る必要があるからとても大変でした」とはっとりさんは話してくれました。
はっとりさんが普段手がけている作品では、なんと100層もの色を重ねていることもあるそう
時が経つに連れて表情を変えていく
そしてまた、この色彩彫刻は時が経つに連れて表情を変えていく『経年変化』が魅力なんです。「使う人によってこれからどんな色になっていくのか?どんな個性を見せてくれるのか?がとても楽しみなんです」と笑顔で話すお二人。
色彩彫刻は、使えば使うほどに個性が現れていくので、まさに『使う人が育てていくアームチェア』とも言えるんです。
椅子って合わせるテーブルや他の家具との相性がかなり重要だと思うのですが、このアームチェアはシンプルなマットブラックでスマートなフォルムなので、それほど置き場所を選びません。
でも、この丁寧に施された色彩彫刻は人に自慢したり、ずっと眺めていたくなるような個性ですよね。
色彩彫刻との出会いから10年
「彫りながらどんな色になっていくのかを想像していると、自分自身も楽しんで制作することができるんです」と色彩彫刻の魅力を教えてくれました。
小沢さんとは予備校時代からの友人で、元々は工芸工業デザイン科で焼き物を専攻していましたが、途中で転科し彫刻科へ。そこで木彫に出会い10年ほど前から色彩の彫刻を始めたはっとりさん。
当初は、塗り重ねた色を鉄の棒ヤスリや布ヤスリで削って色を出していましたが、削り粉が色に入り込んでしまい、物体の発色が鈍くなってしまったので、色を彫るという手法に変更されたんだとか。
「制作を進めていく途中で、作品全体を赤色に塗りつぶし、一度作品を壊す(=喝を入れる)ことによって、自分が見えていなかった部分に気づきながら、より良い作品に仕上げていけるんです」と印象的なエピソードを語ってくださいました。
他にも、「実は昨年から自分の作品にタイトルをつけるようになったんです」そう教えてくれたはっとりさん。キャラクター感がある作品を制作したことがきっかけで、名前のようなタイトルをつけはじめました。タイトルがあることで作品への愛着がより湧いたそうです。
「マッスルさん」
他にはどんなキャラクターがいるのか、はっとりさんのInstagramを覗いてみてください。
<はっとりこうへい (@hattliskouhei) • Instagram photos and videos>
対比する芸術同士が見事に融合し、一点物の椅子に
鉄で作られていることを忘れてしまうほどに、滑らかで精悍なアームチェア。ミリ単位で計算された構造がクールな印象を与えてくれますが、このアーム部分に色彩彫刻が加わったことで、華やかな一点物の椅子になった今回のコラボ作品。もちろんそのこだわり抜いた椅子は座り心地も文句なし。
2人の作家の想いや技術が詰まったチェアをO&Oがお届けします。
自分ならではの色に育てながら、あなたもこのチェアとともにたくさんの想いや時を刻んでみてはいかがでしょうか。